「マクロを作った人が辞めたら誰も触れない」— VBA属人化のリスクと解消の道筋

Excelマクロ(VBA)を作った担当者の退職で業務が止まる——属人化のリスクと、棚卸しから始める解消の道筋を「維持・移植・廃止」の3パターンに整理して解説します。

「Excelに詳しい社員が昔作ったマクロで業務が回っているが、その人が来月退職する」——このタイプのご相談は珍しくありません。動いている間は功労者、止まった瞬間にブラックボックス。VBA(Excelマクロ)の属人化は、多くの会社が抱える静かなリスクです。この記事では、属人化が起きる構造と、棚卸しから始める解消の道筋を整理します。

なぜVBAは属人化しやすいのか

  • 業務の合間に「個人の工夫」として作られる(開発計画も予算もなく生まれる)
  • 本人は中身を分かっているので、ドキュメントを書く動機がない
  • 会社がその存在を把握しておらず、IT資産として管理されない
  • 「作った人」は感謝される一方、「引き継げる状態にする」作業は評価されにくい

VBAそのものが悪いわけではありません。手元の作業を自動化する道具としては今でも優秀です。問題は、個人の道具として生まれたものが、管理されないまま会社の業務基盤になってしまう構造のほうにあります。これはExcel管理の限界サインのひとつ、「特定の人しか触れないファイル」の最も深刻な形です。

放置するとどうなるか

  • 仕様変更ができない: 税率の変更、帳票様式の変更、組織変更——業務側の変化にマクロが追従できなくなる
  • ある日突然止まる: ExcelやWindowsの更新で動かなくなる日が、いつか来る。そしてその日は選べない
  • 正しさを検証できない: 計算ロジックが合っているのかどうかさえ、誰も確認できない

怖いのは、これらが「作者の退職後」に起きることです。聞ける人がいなくなってから問題が顕在化するため、対処コストが跳ね上がります。

まずやること: マクロの棚卸し

いきなり「作り直し」を考える前に、現状把握から始めます。

  1. マクロ入りファイル(.xlsm など)を共有フォルダ・各自のPCから洗い出す
  2. それぞれ「何の業務で」「誰が」「どのくらいの頻度で」使っているかを一覧にする
  3. 「止まったら業務が止まるもの」に印を付ける
  4. 作成者が在籍しているうちに、処理の流れを聞き取って記録する(口頭の説明をメモするだけでも価値がある)

Point

棚卸しの成果物は、Excelの一覧表で十分です。大事なのは立派な資料を作ることではなく、「会社として存在とリスクを把握している」状態にすることです。

解消の3つの道筋

棚卸しができたら、マクロごとに次の3つのどれかに仕分けます。全部を作り直す必要はありません。

道筋向いているケース注意点
① ドキュメント化して維持処理が安定していて、当面変更の予定がない担当者の「次の退職」で同じ問題が再発しうる
② Webシステムへ移植複数人で使う・変更が多い・業務の中核を担っている単純移植ではなく、業務の見直しとセットで行うと効果が大きい
③ 業務ごと見直して廃止マクロの目的自体が古くなっている「昔は必要だった集計」が今も必要かを、まず疑ってみる

経験上、棚卸しをすると③に仕分けられるマクロが意外と見つかります。使われていない自動化を移植するほどもったいない投資はないので、②の検討は①③を除いた後に行うのが順序です。

まとめ

  • VBA属人化は「個人の道具が、管理されないまま業務基盤になる」構造の問題
  • リスクは作者の退職後に顕在化する。動いている今のうちに棚卸しを
  • 仕分けは「維持・移植・廃止」の3択。全部を作り直す必要はない

「うちのマクロ、どれが危ないのか」の仕分けからお手伝いできます。作成者がご在籍のうちが好機です。まずは1業務だけ相談するからどうぞ。